ぼうさい甲子園で唯一「殿堂入り」している舞子高校環境防災科。臨時休校中も学校再開後も、イベントや専門の防災科目で「今だからできること」を考え、提案し続けた。環境防災科の神髄は学びを背景に提案するところ。授業に招いた外部講師から防災だけではなく、災害としての新型コロナウイルスの実態を学び、対応を考え、クラスメートと相談してできることを発信してきた。もちろん、自分たちでも情報を集めてメールをやり取りしながら、何ができるかを考え続けた。  「防災うちわ」や「地域防災セミナー」などのとりくみは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている社会で災害が発生したら大変だという認識を背景に、地域に防災の大切さを発信しようという気持ちの表れだ。  今後も、出前授業や他校との交流を遠隔あるいは可能であれば対面で続けていくという。  環境防災科のとりくみには、新型コロナウイルス感染症の影響下であっても、「何かできる」という期待を抱かせる力がある。
環境防災講読(フェイスシールドをつけて日常と非日常を考える)
人と社会(手洗いポスター作成)
CODE特別講義
JL学習会(ブレーンライティング)
校内募金活動

兵庫県立舞子高等学校

休校中は、今だからこそできることを考えた

 舞子高校には環境防災科という、全国初の防災専門学科がある。これまで2度のグランプリを受賞して「殿堂入り」し、それからは生徒たちがボランティアでぼうさい甲子園の運営に携わっている。

新型コロナウイルス感染症の影響下で、学科の目玉であるネパールや東北への訪問、他校との交流などの行事が次々に中止に追い込まれる中でも、生徒たちは「自分たちにできること」を模索し続けた。

 3月から始まった臨時休校では、先生方と生徒たちがメールやスタディサプリメッセージでやり取りを続け、こんな時だからできることを考え、形にしていった。

 「今、私たちにできること」を考える休校中の課題では、生徒たちがいろいろなアイデアを出し、その内容をホームページで公開した。後輩の現状を気に掛ける先輩から届いたメッセージも配信した。

コロナ禍の今、災害が発生すれば厳しい状況になると考えた生徒たちは、ネットでのやり取りを通して「防災うちわ」をデザインし、4,000枚を作った。いろんな機会を通して配布し、防災啓発につなげている。

 ただ、1年生は入学した者のお互いを深く知る機会がなかったので、かなり不安だったようだ。各自の自己紹介を集めて先生がまとめて送るなど、お互いを知るところから始めていった。

 学校再開後は新型コロナウイルス感染症を教科に関連付けて考えている

学習の約3分の1は防災にかかわる内容で、そのすべてが学校設定科目である。どの専門科目も新型コロナウイルス感染症を学びに取り入れた。環境防災科には多くの外部講師が招かれるが、彼らの多くが例年の授業内容に新型コロナウイルス感染症を考える内容を組み込んでくれたという。以下は専門科目でとりくんだ新型コロナウイルス感染症を取り入れた授業の一例だ。

  • 手洗いポスターの製作と掲示と「いいね!」投票を通しての啓発
  • 新型コロナウイルス感染症の流行下での避難所運営
  • 避難所での感染拡大をイメージする連関図の作成
  • 感染予防着やフェイスシールドの製作
  • 世界のコロナ禍を学び、SDGsへの影響を考える
  • 防災標語を作って発表
  • 関連記事や書籍の講読

新型コロナウイルス感染症に配慮した活動

 学校周辺の地域では普段は夏祭りと防災訓練を一緒に開催して住民の意識を高めていた。それが中止となった。7月に予定しながらもいったん延期となった「地域防災セミナー」を短い夏休みの終わりに開催した。屋外でできる活動を考え、AEDや水消火器、新型コロナウイルス感染を想定した心肺蘇生などの活動にとりくんだ。2019年の千葉の台風で熱中症が問題になったのを知り、足湯ならぬ「足水」も実施した。尿素と水を混ぜると一気に冷え冷えになるという。そのメカニズムを使って熱中症予防も行った。

工夫を凝らした各ブースでは生徒手作りの解説パンフレットも配布した。

 舞子高校は、災害があると必ず街頭募金をしてきた。7月の豪雨災害後にも募金にとりくみたかったが、できなかった。オンラインでニーズ(needs:し被災者が必要としていること)とワンツ(wants:支援者がしたいこと)を繋ぐ活動をしているサイトがあると知り、参加した。また、被災地に支援に入っている知り合いのNGOを通して米を送った。

 これからも特別支援学校との交流や近くの小学校への出前授業、南あわじ市との連携、トルコとの交流など、国内外の学校や団体との交流は続いていく。いくつかはオンラインになるだろうし、対面で行えるものもあるだろう。しっかりと準備したいとのことだった。

情報をインプットし、考え抜いてアウトプットする

その時々にできるベストを考えて実行に移す姿勢は、環境防災科が大切にしている学びのスタイルだ。必要な情報をインプットして、考え、議論してアウトプットしていく。これも環境防災科の学びの本質だ。

 先生方は、新型コロナウイルス感染症と環境防災科の学びをどう融合させ、そこで何ができるかを考えさせ続けている。この問題には簡単な答えがあるわけではない。ある先生は「生徒たちとゆっくりと話し合う時間が欲しい。正解を求めずに話したい」という。「誰が感染しても不思議ではない状況の中で、どうやったら自分と周りの人たちを守れるかという発想を持ちたい。それが防災をやってきたことの意義だと思う。自分にできることを探す思考パターンを持っている方が、肯定的に生きていける。」

休校前後の動き   

2月27日(木)  首相が全国の小中高に3月2日からの休校を要請。

2月28日(金)  卒業式。保護者は参加したが在校生の参加は無かった。

3月2日(月)   1、2年生を登校させ、状況説明と休校中の指示を行った。

3月3日(火)~   休校開始。担任によっては電話連絡で生徒とつながっていた。SNSでのやりとりは制限されているので、封書でも連絡を取り合った。

3月16日・23日  生徒登校可能日(分散して実施)。教科書購入等、最低限の内容。

3月24日(火)~  春季休業。部活は可能(時間制限あり)。これが生命線となって、部活の生徒の情報だけではなく、入っていない生徒の情報も集めることができた。

4月8日(水)   生徒登校可能日。午後から1年生の入学説明会。(式典ではなく説明会にして、保護者と入学生だけが参加。)以後、4月中は登校なし。

4月9日~     生徒・学校のオンライン環境が整っていなかったため、はじめは課題や連絡を郵送でやりとりした。担任からの電話で安否確認も随時行った。 *環境防災科はG-mailアドレスを設定し、科の教員(複数)と、生徒との、個別やりとりができるようになった。

5月~      公費助成でスタディサプリを導入。課題のアップロード・ダウンロードの他、担当教員と生徒がメッセージをやりとりできるようになった。

5月末      各学年で登校可能日を設定。キャンパスカウンセリングは電話で行う。